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作家・郡司ななえさんの盲導犬 ウラン引退 余生は上越市で "5人目の娘"としてボイコさんの元へ

ウラン引退1.jpg写真=ボイコさん一家にビニール袋を使った排せつ方法を教える郡司さん(手前右)

映画にもなった「ベルナのしっぽ」の著者で上越市出身の作家、郡司ななえさん(東京都在住・72)の盲導犬ウランが引退し6日、上越市寺町2の音楽家ボイコ・ストヤーノフさん(64)一家に引き取られた。

郡司さんは27歳のときに失明し、子育てをするため最初の盲導犬ベルナと出会った。盲導犬との13年間の生活を描いた「ベルナのしっぽ」(1966年)はベストセラーになった。2代目のガーランドは病気のため、わずか1年2か月を共にしただけだった。3代目のペリラは15歳まで長生きし、最後を看取った。4代目のラブラドール・レトリーバー、ウランは9歳。郡司さんにとって、初めて引退させる盲導犬となった。

盲導犬の実働期間は短く、10歳前後で盲導犬ユーザーと離れて引退するのが通例。引退後は、専用施設やボランティアの家で余生を過ごす。郡司さんは知人らを通じて引退犬を引き受けてくれる人を探していたところ、ボイコさんに巡り合った。

郡司さんは昨秋、ウランとともに2回、ボイコさんの家を訪れ、受け入れてもらうことを決めた。

この日、郡司さんは新幹線に乗り、ウランとともにやってきた。帰りは盲導犬がいないため、長男の幹太さんも同行した。

一行が到着すると妻のマルーシさん(39)、四女のミレナさん(9)、三女のミカエラさん(14)、大阪から駆けつけた次女のカヤさん(35)が周囲を取り囲み、ウランを歓迎した。

郡司さんは玄関先で、盲導犬のシンボル、ハーネス(胴輪)を外し、ボイコさんが用意した赤い首輪を着けた。ビニール袋に排せつさせる方法を教え、これまで使っていたブラシ、好物のおやつなどを手渡した。

郡司さんは「今日から皆さんの5人目の妹です。よろしくね」と姉妹らに頼んだ。ボイコさんが散歩の練習にウランを連れて行った間に、「きりがないから」と足早に車に乗り込んだ。

家にも入らず、別れの言葉も言わずに帰った郡司さんの辛さを察したかのように、ウランは家に入ってからも玄関の方をしばらく見つめていた。

指揮者、作曲家、ピアノ奏者でもあるボイコさんは「みんな犬が大好きなので、家族の一員として大切にしたい。犬は耳が良く人間より高い周波数の音が聞こえるので、私たちの音楽をどう理解するか楽しみ」と話していた。